唯称庵跡のカエデ林のいわれ
今から約200年も前、1822年(文政5年)のことです。
この地の豪農であった安国家は、幼い子どもを亡くしてしまい、その霊を慰めるため、浄土宗の高僧であった「徳本上人」の弟子である「本励上人」を大阪より招き入れることとなりました。
その際に滞在してもらった庵は「唯称庵」と名付けられ「本励上人」はここに約17年間滞在されることになります。
庵(いおり)とは僧侶の住む、小さな簡単な住居のとを言いますが、残念ながら1960年に傷みが激しくなったことで解体されました。今でもカエデ林のなかにひっそりとその遺構を見ることができます。
もともとカエデ林は、「本励上人」が京都から苗を取り寄せ、庵の周りに植栽されたものだそうですが、それから250年の時を経て、1978年には広島県の天然記念物として指定を受けるほどにまでなっています。
今回はカエデ林も見頃を迎える11月初旬、かつての高僧を偲びながら見事な紅葉を見てまいりましたのでご紹介してみます。
現在残っているカエデは約40本、すぐそばには川が流れており、40本のうち25本が川の護岸に一列に並ぶように植えられています。
温度の関係なのか、川べりのほうのカエデは若干紅葉が早い様子です。
庵の手前付近は、比較的こぶりなカエデがいくつかあり赤く染まっておりました。
大きさからして、後に植えられたか、新たに芽を出したかの若木かもしれませんね。
まさに紅のもみじ、青空に映えます。
有名なモミジの名所のように、一帯が赤いカエデで埋め尽くされているわけではありません。
派手さはないが味わいがあるというか。
この雰囲気、嫌いではありません。
奥のほうにある唯称庵跡も観ておこう
さらに奥に進んでいくと唯称庵跡があります。
ちなみに敷地は私有地で、湧永製薬さん管理とのこと。
こんな素晴らしい場所を保全してくださるのはありがたいことです。
現在は基礎石のみが残り、木々に生い茂った付近にその遺構を見ることができます。
奥に見えるのはきっと井戸だったんでしょうね。
期間限定でカエデ祭りも毎年開催されているぞ
秋を満喫するにはあまりにすばらしい場所なのでありました。